研修医の平均年収はいくら?無理なく続ける貯金や節約のコツとは
「薄給で激務」のイメージが強い研修医ですが、2004年に新医師臨床研修制度が制定されて以降は給与や待遇がかなり改善されました。
しかし、まだ研修を受ける医療機関によって給与は差があり、やりくりに苦労している研修医も多いことでしょう。
この記事では、研修医の平均年収や無理なく貯金を積み立てたり節約したりするコツを解説します。
研修医とは?仕事内容や前期研修と後期研修の違い
はじめに、研修医の仕事内容や前期講習、後期研修の違いなどを解説します。
一人前の医師とはどのような違いがあるのでしょうか?
平均収入も解説するので、参考にしてください。
研修医とは?
研修医とは、医師国家試験に合格して研修中の医師のことです。
医師は人の命を預かる大切な仕事のため、一人前の臨床医になるには医療機関で研修を受けなければなりません。
研修の1〜2年目を前期研修、3〜5年目が後期研修と呼ばれています。
なお、前期研修(初期研修)は医師法に基づいて義務付けられているものですが、後期研修は法令によって義務付けられた研修ではありません。
後期研修は、専門の診療科を定めてキャリアを積む期間です。
したがって、後期研修は医療機関によって独自のプログラムがあり、研修の仕方も複数あります。
初期研修は医師免許を持っていても重要な処置は任せられることはほとんどなく、先輩医師について勉強の日々を送ります。
一方、後期研修中の医師は経験を積んだ医師として、重要な戦力として扱われるのが一般的です。
以上のような理由で、前期研修医と後期研修医では給与も待遇も異なります。
なお、法律上「研修医」という職業はなく、病院では初期研修医を「研修医」、後期研修医を「専攻医」と呼ぶ医療施設が多いようです。
研修医の仕事内容
初期研修医は、指導医のもとで臨床経験を積むことが仕事です。
簡単な処置や手術の助手、診療科によっては外来で診察をおこなうこともあります。
ただし、研修医だけで重要な判断や診断を下すことはありません。
外来で診察をしたり病棟で回診をおこなったりしたら、指導医に報告して判断を仰ぎます。
1年目より2年目の初期研修医のほうができる仕事が増えますが、それでもまだ重要な診断を独断で下すことは許されません。
なお、初期研修医は数ヵ月単位でさまざまな科をローテーションします。
覚えることがたくさんあるので大変な日々ですが、やりがいも感じられるでしょう。
研修医の平均年収は?
かつて研修医は薄給で激務といったイメージがありました。
しかし、前述したように2004年に新医師臨床研修制度が制定されて以降は給与や待遇がかなり改善されました。
それでも、大学病院と民間の病院では給与に差があります。
また、前期研修医と後期研修医でも給与に差があるのが一般的です。
ここでは、研修医の給与事情を解説します。
研修医(前期研修医)の年収
前期研修医(臨床研修医)の年収は研修を受ける医療施設によって以下のように差があります。
施設名 | 1年目 | 2年目 |
---|---|---|
臨床研修病院 | 451万円 | 502万円 |
大学病院 | 307万円 | 312万円 |
なお、この年収はあくまでも平均なので、施設によっても差があります。
また、地域差もあり、医師がたくさんいる都市部より北海道や東北といった研修医が集まりにくい地域のほうが給与は高めの傾向です。
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、新規学卒者の賃金は大学院卒の場合で25万5,600円です。
12ヵ月分の休養は306万7,200円、賞与を踏まえて14ヵ月分とすると357万8,400円となります。
医学部は6年制ですから一般的な院卒者の年収と比べると研修医の年収水準は、臨床研修病院の場合は高水準、大学病院は同等程度か若干低めでしょう。
参考:厚生労働省|臨床病院における研修医の処遇(平成23年度採用予定の臨床研修医の推計年収)
専攻医(後期研修医)の年収
後期研修医は医師として一定の経験を積んでおり、重要な戦力とみなされ、前期研修医に比べると給与は大幅にアップします。
後期研修医の平均年収は650〜850万円程度です。
研修を受けている地域や医療施設によって差がありますが、一般的な20〜30代前半の年収に比べると高めといえます。
一般的な職業は東京や大阪などの都市部の方が年収は高めですが、医師の場合は地方のほうが需要は高く、年収は高めの傾向です。
研修医のアルバイトは禁止⁉︎
前期研修医の場合は、研修に専念するために基本的にアルバイトは禁止です。
したがって、前期研修医は研修先からの収入だけで生活をしていかなくてはなりません。
しかし、後期研修医になればアルバイトが解禁されます。
後期研修医の中には年収の不足を補うために、勤務先とは違う病院へ外勤をすることもよくあるでしょう。
また、多くの医療施設が医師不足を研修医のアルバイトで賄っているのも現状です。
アルバイトは夜間や休日の当直が多めです。
病院によって年収差が大きい
前述したように、研修医の年収は病院によって差があります。
研修先は良い臨床経験が積めるかどうかで決める方も多いですが、年収も注目しておきましょう。
特に、奨学金を抱えていたり一人暮らしをしたりする場合は、ある程度年収がある病院を選ばないと生活が苦しくなることもあります。
なお、地方の病院のなかには高い給与で研修医を集めているところもありますが、それに見合った研修が受けられるかも調べることが重要です。
奨学金の返済はどうする?
大学の医学部は学費が高額なので、奨学金を利用している方も珍しくありません。
「給与が低いと奨学金の返済が心配」と不安になる方もいるでしょう。
奨学金のなかには、奨学金を受けた期間だけ指定する病院などで勤務すれば奨学金の返済が免除されるものもあります。
高額の奨学金を利用する必要がある場合、返済免除の条件がつけられるものを選ぶといいでしょう。
奨学金を選ぶ際は、よく比較検討することが大切です。
研修医が無理なく続ける貯金や節約のコツ
一人前の医師になれば、給与は増えます。
しかし、医師は出費も多い職業なので、研修医の頃から貯金や節約の習慣を付けておくのがおすすめです。
ここでは、研修医が無理なく貯金をしたり節約したりするコツを紹介します。
支出の多さに悩みも
後期研修医になれば、同年代の平均年収に比べて高めの収入を得られます。
しかし、専門医になるための勉強には費用がかかりがちです。
また、仕事関連の出費も多く、給与が高くても貯金ができない医師は決して珍しくありません。
特に女性医師で家庭を持っている場合、家事代行、保育園の費用、ベビーシッターの費用など、家計を維持するための出費も多くなります。
後期研修医のなかには、給与だけでは賄えず、外勤のアルバイトをしてようやく生活している方も決して珍しくありません。
リスクに備えて共済や保険を選ぶ
医師は診療科によっては家に帰ることが難しいくらい激務が続き、体調を崩す方もいます。
また、臨床医は医療訴訟などのリスクも常に抱えています。
医師向けの保険には、休業に備えて保険医協会の「保険医休業保障共済」などがあり、加入しておけばいざというときに安心です。
このほか、医療事故による賠償費用、訴訟費用などを補償する「医師賠償責任保険」などもあるので、専攻した診療科によっては加入をすすめられることもあるでしょう。
過剰にかける必要はありませんが、多額の補償が必要になるものに対してはかけておいたほうが安心です。
教育資金と老後資金作りが課題
医師のご家庭は、父も祖父も医師、子どもも医師にしたいというケースがよくあります。
医学部は入った後も入る前でもお金がかかります。
子どもの教育資金の確保は医師にとって重大な課題です。
毎月少しずつでも貯金をする習慣を付け、子どもが生まれたらできるだけ早く学資保険に入っておくと良いでしょう。
また、老後の資金作りには保険医協会の共済制度が運営する「保険医年金」などがあり、利回りが高くおすすめです。
このほか、開業医ならば自営業なのでiDeCoを利用してもいいでしょう。
まとめ:年収事情を知ってよくリサーチしよう
医師は6年間大学に通い、2年間は研修医として勉強しなければなりません。
ストレートで大学に入っても卒業するときは25歳、前期研修を終えるのは27歳です。
女性の場合は結婚を考える方もいるでしょうし、男性医師も結婚が早すぎる年ではありません。
人生設計を考えつつ、学生のうちから給与面も考えて研修先を探すのがおすすめです。