【新専門医制度】研修内容が違う?制度が変わった背景や課題とは

【新専門医制度】研修内容が違う?制度が変わった背景や課題とは

2018年より、新専門医制度が導入されました。

それにともなって2020年よりシーリング制度も導入され、専門医になるまでのシステムが大きく変わりました。

導入されてすでに5年が経っているので、ある程度先輩の話なども充実してきたことでしょう。

それでも、旧制度との違いや導入された背景などを知っておくと、よりシステムへの理解も深まります。

今回は、新専門医制度の概要、導入された背景、課題などを紹介します。

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新専門医制度とは

新専門医制度とは

はじめに、2018年から導入された新専門医制度の概要や導入の目的などを解説します。

従来の制度とどのような違いがあるのでしょうか?

新専門医制度とは?

新専門医制度とは、2018年の4月から新たに導入された制度です。

厚生労働省が定めた所定の初期臨床研修を終了した医師たちが対象で、指定条件を備えた医療機関で修行を積んでいきます。

この制度の導入で、医療機関が独自に募集していた「後期研修医」の制度は事実上終了しました。

新専門医制度の目的や内容

新専門医制度は、「医師が一定以上のスキルを身につけて、平等に国民全員に良質の医療を提供すること」を目的に導入されました。

なお、同時に研修を受ける医師のキャリア形成支援も重視している形をとっています。

新専門医制度の内容は、初期研修を終了した医師が、内科や外科など19領域の「基本領域」の専攻医となり、所定の研修を3年間かけて終了し、専門医資格を取得します。

専門医資格を取得した医師は、さらに専門医に関連した分野で専門性の高い24領域の「サブスペシャルティ領域」の専門医資格を目指すカリキュラムです。

「基本領域」の研修内容

初期研修を終了した医師が専門医として研修を受けられる施設は、日本専門医機構が指定した医療機関に限られます。

従来の「後期研修医制度」よりもぐっと研修できる施設を絞ることで、医師にレベルの高い研修を受けさせるのが目的です。

研修期間は3年間で、一定の症例を経験したのち、筆記試験や口頭試問などを受けて合格すると本領域の専門医資格を得られます。

現役で医学部に入ってストレートで卒業して25歳で研修医になった場合、専門医資格を取得するのは30歳です。

新専門医制度が導入された背景は?

新専門医制度が導入された背景は?

では、なぜ現在のような新専門医制度が導入されたのでしょうか?

ここでは、新専門医制度が導入された背景を解説します。

新専門医制度が導入される前の課題や認識とは

新専門医制度導入前の専門医は、各学会が独自に審査基準を定めているだけでした。

そして、取得の難易度が学科によってばらつきがあり、それが医師の知識の技術の差になって表れるケースもありました。

また、所属する医師の専門医資格の広告掲載が可能だったため、専門医=知識が豊富で高い技術を持った専門性の高い医師というイメージが強かったのです。

もちろん、豊富な知識と高い技術を持った専門医もたくさんいます。

しかし、そのレベルが一定ではなかったため、「専門医」を名乗りながら技術や知識的には未熟な医師もいたのです。

そのため厚生労働省は、すべての専門医の資格取得に一定基準の難易度を設け、実情と国民の認識の違いを埋めれば適切な医療を提供できると考えたのです。

長年にわたって検討を重ねた結果、新専門医制度導入が実現しました。

専門医の質や専門医像のギャップ、地域格差に課題

従来の専門医制度では「専門医の質」「専門医像のギャップ」が大きかったと前述しましたが、それに加えて「地域格差」の課題がありました。

初期研修を終えた医師は自分の意思で後期研修先を決められたため、都市部の一部の施設に人気が集中しがちだったのです。

医師の地域偏在・診療科偏在は医療の地域格差を生みます。

医療の地域格差は、そのまま地域の衰退にもつながりかねません。

そこで、全国どこでも安心して医療が受けられる環境作りや、患者さんが安心できる良質な医療を提供していくシステムを作るために、新専門医制度が導入されたのです。

既存の制度と新専門医制度の違い

従来の後期研修制度では、専門医の認定プログラムは各学会で独自運用されていました。

一方、新専門医制度では、中立的な第三者機関である「日本専門医機構」が認定プログラムを運用しています。

学会独自のプログラムではなく、各診療科共通の認定プログラムが設けられたことが大きな違いです。

また、従来の制度では「初期研修医」と「後期研修医」の両方をあわせて「研修医」と呼んでいました。

新専門医制度では、研修医と呼ばれるのは初期研修医のみです。

「後期研修医」の名称はなくなり「専攻医」という呼び名に変更されました。

このほか、「臨床研究医コース」など、新制度独自の研修のカリキュラムも誕生しました。

新制度が導入されたことにより、初期研修を終えた時点である程度専攻を絞っておく必要が出てきています。

従来のように、後期研修の途中で別の診療科に興味が出てきたので転科、といった柔軟さはなくなりました。

新専門医制度の課題

新専門医制度の課題

最後に、新専門医制度の課題や将来の展望などを紹介します。

これから新専門医制度を利用して専攻医になる方は、参考にしてください。

医師偏在を防ぐために

優秀な医師を育成するには、研修を受ける施設にも一定のレベルが要求されます。

しかし、施設のレベルに厳しい条件を課しすぎると、研修を受けられる施設が都市部に限られてしまいます。

その結果、地域間・診療科間での医師偏在は助長されてしまう傾向にありました。

この医師や診療科の偏在をなくすために、2020年よりシーリング制度が始まりました。

これは、日本専門医機構と学会、都道府県、厚生労働省が「医師偏在の助長を防ぐ」仕組みを構築・運用するようになった結果です。

▼シーリング制度についてこちらの記事で詳しく解説しています。
専攻医の採用人数に制限がある?シーリング制度について解説

新専門医制度資格取得に向けた研修とは

2024年度から「新専門医制度資格取得に向けた研修」をおこなう専攻医の採用に関する議論が進む予定です。

つまり、近い将来またシステムが変更される可能性があります。

2018年から現在にかけて、研修医制度は大きな転換期を迎えており、しばらくは細かい変動が続いていく可能性は高いです。

ちょうど研修医になった新米医師は何かと大変ですが、指導医や専門医もしっかりとサポートしてくれるので、情報収集をしつつ研修をすすめていきましょう。

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まとめ:最新情報や今後の動向を確認しよう

ここ数年は研修医制度の大きな転換期を迎えています。

医療の世界は日進月歩で進化し続けており、医師の制度もそれに合わせた改革が常に求められています。

先輩の経験が参考にならないのは大変ですが、その分研修する側のサポートも充実する予定です。

常に最新情報を手に入れて、システムの変更に備えましょう。