インフォームドコンセントとは?患者が知っておくべき意味や目的をわかりやすく解説
近年、医療の現場では「インフォームドコンセント」の徹底が図られています。
しかし、「インフォームドコンセントとは何か」「なぜ、重要なのか」などの疑問を持っている方も多いでしょう。
この記事では、インフォームドコンセントの概要や目的、医療現場で徹底する必要性などを紹介します。
インフォームドコンセントとは
はじめに、インフォームドコンセントの概要や目的、必要性などを紹介します。
医療現場はもちろんのこと、介護サービスでもインフォームドコンセントは重要です。
目的や必要性がわかれば、具体的な質問もしやすくなるでしょう。
インフォームドコンセントの始まりや歴史的背景
インフォームドコンセント(informed consent)とは、「十分な情報を得たうえでの」という意味を持つ英語です。
医療現場でのインフォームドコンセントとは、以下のプロセスを指します。
- 患者やその家族に、病状や治療内容を十分に理解してもらう
- 患者と家族が説明内容をどのように受け止めたか、意向を確認する
- どのような医療を選択するか、医療従事者と患者の間で理解を深めつつ決定する
なお、インフォームドコンセントは患者さんと医療従事者だけでなく、患者の家族、ソーシャルワーカー、ケアマネージャーとの間でもおこなわれます。
かつては、重大な病気になったときは患者本人には告知せず、医師と患者の家族だけで治療方法を決めるケースもありました。
しかし、昨今は「患者の知る権利」「自己決定権」を尊重し、保障する考え方が徹底されています。
そのため、さまざまなプロセスを経て患者とその家族、医療従事者、介護従事者との間で理解と同意を得たうえで、治療や介護をおこなうのが普通です。
医師やケアマネージャーが患者さんの同意や理解を得ず、勝手に医療行為などを進めることはありません。
インフォームドコンセントの始まりや歴史的背景
インフォームドコンセントは1950年代後半にアメリカで始まりました。
きっかけとなったのはカリフォルニア控訴裁判所での1957年のサルゴ判決でした。
この裁判は、アメリカでの医療過誤をめぐる訴訟で、判決のなかで初めて「インフォームドコンセント」という言葉が、使われたのです。
その後世界各国で立法化が進み、日本では、1997年の医療法改正の際、インフォームドコンセントが「医療関係者がおこなうべき努力義務」として初めて明記されました。
東京都では2001年7月に「都立病院の患者権利章典」が東京都立病院で制定され、これが、日本での国公立病院でのインフォームドコンセントの先駆けといわれています。
インフォームドコンセントの内容
インフォームドコンセントでは、以下のような事柄の説明や理解、同意が求められます。
- 診察の結果、医師がどのような病気を疑っているのか
- なぜ、検査や治療が必要か
- どのような方法で検査や治療を進めるのか
- 検査や治療のリスクや注意事項
- 注意事項検査の結果と経過、処方される薬
患者さんやその家族は、医師や看護師からの説明を聞いて理解し、同意しなければ治療が進みません。
また、インフォームドコンセントは薬局で薬剤師によってもおこなわれる場合があります。
同意書への署名はいつ誰がする?対象は?
インフォームドコンセントは、口頭の説明と同意の場合と、文章で説明をしたあとに文章で署名と同意を得るものがあります。
ここでは、同意書への署名が必要な事例と方法を紹介します。
同意書(承諾書)への署名
文章でのインフォームドコンセントがおこなわれ、同意書(承諾書)への署名が必要な場合、署名をするのは原則として患者本人です。
配偶者や子どもなど、近しい親族であっても本人の意思を確認せずに同意書に署名はできません。
しかし、患者の意識がないなど正常な判断ができない場合で、患者が保護者や保証人などの代理人へ代筆を依頼している場合は、代理人が署名できます。
また、患者が急な事故や病気で意識を失い、治療のために同意書へのサインが必要な場合は病院の判断で臨機応変な対応がおこなわれます。
子どもの場合のインフォームドコンセントは何歳から?
子どもがインフォームドコンセントの対象になった場合、中学修了または16歳以上ならば本人におこなうのが原則です。
15歳未満の場合、もしくは中学修了または16歳以上であっても判断能力がないと認められた場合は、両親をはじめとする親権者にインフォームドコンセントが求められます。
同意書のサインも親権者が代理人となっておこなうのが一般的です。
インフォームドコンセントの注意点
最後に、インフォームドコンセントを受ける際や実施する際の注意点を紹介します。
医療側の注意点
インフォームドコンセントをおこなう場合、医療従事者側が注意する点は以下のようなものです。
- 患者側の理解度を上げるため説明時には専門用語の使用はできるだけ避け、わかりやすい言葉で説明するよう努める
- 説明直後に同意書に署名を求めるのは可能な限り避け、患者側に理解や意思決定までの十分な時間を設定する
- プライバシーの守られる場所で説明や意思確認をする
医療従事者にとっては当たり前のことでも、患者さんやその家族にとっては理解できないこともたくさんあります。
また、手術など重要な決断はすぐにできない場合も多いでしょう。
医療従事者は「最善の方法だから、同意をしてください」と思っていても、それを強制してはいけません。
たとえ治療が成功しても、患者さんとその家族と医療従事者との間に決して埋まらない溝ができる可能性があります。
患者や家族側の注意点
患者や家族にとって、インフォームドコンセントは不安で理解が難しいケースもあります。
ただし、インフォームドコンセントは治療や検査への理解を求めるものでもあるので、医療従事者は患者やその家族が納得するまで説明してくれるはずです。
その場では同意し、あとで「実は不安や不満があった」と言っても受け入れてもらいにくいです。
医師がそう言っているのだからと鵜呑みにせず、聞きたいことわからないことは遠慮なく質問しましょう。
まとめ:患者側の理解と納得が大事!
インフォームドコンセントは医療従事者の義務でもあり、患者の権利でもあります。
病院によって対応の差はありますが、インフォームドコンセントは患者さんが理解しやすいよう、平坦な言葉で丁寧に説明してくれるはずです。
患者さん側も不必要に恐縮せず、わからないことや不安なことがあったら納得いくまで説明を求めましょう。
そうすれば、安心して治療や介護を任せられるようになりますよ。