【特定看護師とは】難易度が高い?なり方や仕事内容、期待される役割って?
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特定看護師とは、2015年に始まった新たな制度です。
特定行為研修と呼ばれる研修制度を修了した看護師は、『特定看護師』として、特定行為を実践するうえで必要となる高度な知識と技能を有すると認定されます。
超高齢化社会を迎える現代、看護師の役割拡大が重要であると、この制度が注目されています。
この記事では、特定看護師に期待される役割や仕事内容、研修制度の概要など、特定看護師がどのようなものかを詳しく解説します。
看護師としてのキャリアアップにつながる重要な制度を学んでいきましょう。
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目次
特定看護師とは
特定看護師とは、『特定行為に係る看護師の研修制度』を修了した看護師のことです。
2015年10月に保健師助産師看護師法の改正により義務付けられた新しい制度で、研修を終了した看護師は、特定行為を実践するうえで必要となる高度な知識と技能を有すると認められます。
特定行為とは、看護師が診療の補助として実践できる『相対的医行為』のうち、難易度の高い、38の診療補助行為を指します。
特定行為研修を修了した特定看護師は、事前に医師が作成した『手順書』をもとに、医師の判断を待たずにこの38の診療補助を実践できるようになります。
特定看護師に期待される役割
特定看護師は、医師不足により患者へスムーズに医療が提供されない問題の解消を期待されています。
高度な知識と技能を身につけている特定看護師は、『特定行為』と呼ばれる38の高度な診療の補助について、事前に手順書で医師の指示を受けていれば、その場で患者の状態を見極め、迅速に対応できます。
素早い判断が必要な急性期医療や在宅医療など、さまざまな現場での看護ケアの充実に寄与するでしょう。
特定看護師は、『治療』と『生活』の両面からの支援に貢献し、患者の立場に立ったケアを提供することが期待されています。
特定行為(21区分38行為)
特定行為とは、診療の補助であり、実践的な理解・思考・判断力と高度な知識・技能が特に必要とされる以下の21区分38行為に分かれています。
具体的な種類は以下のとおりです。
- 経口用気管チューブまたは経鼻用気管チューブの位置の調整
- 侵襲的陽圧換気の設定の変更
- 非侵襲的陽圧換気の設定の変更
- 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整
- 人工呼吸器からの離脱
- 気管カニューレの交換
- 一時的ペースメーカの操作および管理
- 一時的ペースメーカリードの抜去
- 経皮的心肺補助装置の操作および管理
- 大動脈内バルーンパンピングからの離脱をおこなうときの補助の頻度の調整
- 心嚢ドレーンの抜去
- 低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定および その変更
- 胸腔ドレーンの抜去
- 腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された穿刺針の抜針を含む。)
- 胃ろうカテーテルもしくは腸ろうカテーテルまたは胃ろうボタンの交換
- 膀胱ろうカテーテルの交換
- 中心静脈カテーテルの抜去
- 末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入
- 褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
- 創傷に対する陰圧閉鎖療法
- 創部ドレーンの抜去
- 直接動脈穿刺法による採血
- 橈骨動脈ラインの確保
- 急性血液浄化療法における血液透析器または血液透析濾過器の操作および管理
- 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
- 脱水症状に対する輸液による補正
- 感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与
- インスリンの投与量の調整
- 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与および投与量の調整
- 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整
- 持続点滴中のナトリウム、カリウムまたはクロールの投与量の調整
- 持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
- 持続点滴中の糖質輸液または電解質輸液の投与量の調整
- 持続点滴中の利尿剤の投与量の調整
- 抗けいれん剤の臨時の投与
- 抗精神病薬の臨時の投与
- 抗不安薬の臨時の投与
- 抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射および投与量の調整
※出典:特定行為とは│厚生労働省
特定看護師になるには
特定看護師になるためには、特定行為研修制度を受講し、修了する必要があります。
対象者の要件は一律で定められてはいませんが、おおむね「実務経験3~5年以上の看護師」を想定しています。
研修は、共通科目315時間と区分別科目15~72時間で構成され、ほとんどの科目はeラーニングで受講可能です。(筆記試験や実習の時間も含む)
また、受講する研修機関は、特定行為研修制度のポータルサイトにて各自で探す必要があります。
受講できる特定行為、期間、募集人数、受講費用などは施設によって異なるため、内容をよく確認して自分に適した研修機関を見つけましょう。
※参考:
看護師の特定行為研修制度
特定行為に係る指定研修における教育内容(イメージ)
特定看護師を目指すメリット
特定看護師は、高度な知識と技能を得られる、これからの時代に必要とされる制度です。
ここでは、特定看護師を目指すメリットを見ていきましょう。
仕事の幅が広がりやりがいも大きくなる
特定看護師になると、急性期医療や在宅医療など、活躍できる医療現場の幅が広がります。
特定看護師は、医師の指示を待たずに手順書の範囲で処置やケアがおこなえるため、患者を待たせずにスムーズに対処ができます。
医師を待つ時間のもどかしさもなくなるでしょう。
すぐに対応できる特定看護師の存在は、患者に安心感を与え、信頼関係を築けます。
患者の状態やニーズに応じ、適切なケアを迅速に提供できる特定看護師の仕事は、やりがいを感じられるでしょう。
キャリアアップにつながる
特定看護師を目指すことはキャリアアップにもつながります。
高度な知識と技能を有する特定看護師であることは、転職時に強みとなり、給与水準も他の看護師と比べて高くなるなど、求人市場での競争力を高められます。
厚生労働省は団塊の世代がすべて75歳を迎える2025年に向けて、さらなる在宅医療を推進しており、特定看護師の養成・確保が重要な課題とされています。
このような社会的なニーズに対応するため、特定看護師の需要は今後も高まっていくでしょう。
特定看護師の存在は医師や患者にもメリットがある
特定看護師の存在は、医師の業務負担の軽減につながります。
2024年からは医師の働き方改革が始まります。
信頼する特定看護師に特定行為を指示することで、医師は時間とエネルギーをより重要な診療業務に集中させ、治療の遅れのジレンマも改善されるでしょう。
また、患者の待ち時間も削減されます。
特定行為をタイムリーに患者に提供すれば、患者の症状の回復を早期に図れるでしょう。
特定看護師の数はまだまだ足りていない
社会からの需要が高まっている特定看護師ですが、まだまだその人数は足りていない現状があります。
特定行為研修の修了者数は2022年3月現在で4,832名です。
厚生労働省が目標に掲げる「2025年までに10万人超え」にはまだ遠く及んでいません。
原因としては、研修施設が近くにない、受講費用は看護師自身が負担する、仕事との両立が難しいなど、さまざまな課題があります。
適切な施策と支援がおこなわれることで、特定看護師の数を増やし、質の高い医療サービスを提供できる体制の整備が望まれるでしょう。
まとめ
特定看護師とは、患者の支援に『治療』と『生活』の両面から貢献できる、やりがいのある職業です。
特定看護師の数が増えることで、医師の業務負担の軽減や患者の待ち時間の削減にもつながります。
質の高いチーム医療が求められるこれからの時代、特定看護師の需要はますます高まっていくでしょう。
特定看護師の養成は本人のキャリアアップはもちろん、将来の医療現場の発展につながる重要な鍵となるでしょう。
皆さんの熱意と意欲が、看護師の仕事の幅を広げ、医療サービスの向上に寄与することを願っています。